シンガポールのたぶん割と有名なお土産に、「Singapore is a fine city」という文言をあしらったものがあります。
T シャツやマグカップになっていることが多いかな?
私も T シャツ買ったんですが、フィリピンに置いてきてしまって手元にないので、ネットで見つけてきた画像で失礼します。
http://josephine-beeleng.blogspot.jp/2008/07/singapore-fine-city.html
私の買った T シャツはもう少しかっこいいデザインだったかな。。
「Singapore is a fine city」をあしらったお土産はどこにでも売っているってくらいシンガポールではメジャーなんですが、デザインのアップデートは頻繁らしく、最近のものはもうちょっとポップでかっこ良くなっています。
fine の意味
この fine という単語には複数の意味があるので、「Singapore is a fine city」というのはそれをうまく使った皮肉なんですね。
一番目の意味は多分かなりの日本人が知っている用法。
形容詞で「すばらしい、見事な、りっぱな」という意味があります。
A: How are you? B: I'fine thank you!
という受け答えはとても有名です。
ただし、How are you? は単に健康状態を聞く言葉じゃなくて会話のとっかかりの質問なので、「私は元気です」で終わらせるのは英語話者からしてみれば「?」って感じらしいですけれど。
さらに、英語の勉強をある程度やっていないとあんまり馴染みがないと思いますが、fine には「罰金」って意味もあります。
つまりこの T シャツは、
「シンガポールは素晴らしい都市」「シンガポールは罰金都市」
という皮肉になっている訳ですね。
まあデザイン見ると分かりますけれど。
それぞれの英語の意味
せっかくなのでひとつひとつ意味を確認してみましょう。
SGD(シンガポールドル) ⇔ JPY(日本円)のレートは 2016年5月2日現在のものです。
- No Smoking Fine $500・・・喫煙禁止 SGD 500。¥39,573。
シンガポールの路上喫煙禁止は割と有名ですね。日本も東京23区を皮切りに近年路上喫煙禁止が増えてきましたが、シンガポールはもうずっと前から取り組んでいる国。日本やアメリカの喫煙率が高かった時代からだったせいもあり、知っている人は多いと思います。 現地では確かにあんまり見かけないんですが、歩きタバコしている人はいるにはいました。大丈夫なのかなあ、と思って見てましたが。
場所によりそうですが、シンガポールでは結構公共のゴミ箱が整備されていて、灰皿も備え付けられていることが多かったです。こういう形。
http://www.townscapeproducts.co.uk/TownscapeProducts/bins-don-t-have-to-be-rubbish
※ このあとたっぷりモフモフしました。
こういったゴミ箱の周辺で吸うのは構わないらしく、たむろっている人をたまに見かけました。 といっても東京の路上喫煙所のように大勢が群がっている訳ではなく、数人が吸っている程度。 シンガポールは多民族国家なのではっきりしたことは分かりませんが、見た感じは旅行者ばかりでした。 タバコがとても高い国だからなのか、たまたまなのか。
この刑罰のお陰か、路上でポイ捨てされたタバコはあんまり見かけなかった気がします。そんなに注意してみてなかったですけどね。
- No Chewing Gum Fine $1,000・・・ガムを噛むと罰金 SGD 1,000。¥79,146。
ガムのポイ捨てかな?路上喫煙より罰金高いの? 軽く調べてみたら、ガムは持ち込みも製造も販売も禁止なんだそうです。 ポイ捨てされると掃除の手間が半端なく大変だからでしょうかね。理屈は分かるけど意外ですよね。
確かに、シンガポールではガムの噛み跡のあの黒い斑点を路上で見かけなかった気がします。
- No Littering Fine $1,000・・・ゴミを捨てると罰金 SGD 1,000。¥79,146。
ゴミのポイ捨て禁止も割と有名ですよね。ゴミ箱は歩いていると割とよく見かけるので、捨てるのに苦労することはあんまりないと思います。 ポイ捨てを見かけることもなかったし、捨てられたゴミを見かけることもなかったです。
- No Urinating Fine $1,000・・・立ち小便禁止、罰金 SGD 1,000。¥79,146。
まあ実際のところ、日本でもこういった条例や法律はあるんですよね。 立ち小便は確か軽犯罪法違反かな?よっぽどのことがないと捕まることはないですが。 シンガポールの場合は法の適用には結構厳格だと聞くので、見つかったら普通に罰金くらいそうですが。
- No Flower-Picking Fine $500・・・花摘み禁止、罰金 SGD 500。¥39,573。
公園の花壇とかかな?日本でも一応は罰則があったような。桜の木の枝折ってどうこうって話を聞くことがありますね。
- No Flushing Fine $500・・・流れないものをトイレに流すの禁止、罰金 SGD 500。¥39,573。
ちょっと「?」って感じです。この和訳で合っているかなあ。。。 トイレ事情って国ごとの差がとても大きいのですが、シンガポールはトイレが詰まりやすいのかな? 日本の水洗トイレはウォッシュレットを抜きにしても世界的にもかなり恵まれている方で、トイレットペーパーを流せない国も結構多かったりします。
私が利用したシンガポールのトイレはどこも水洗でトイレットペーパー普通に流せましたが、詰まりやすかったりするのかもしれません。 あるいはトイレにゴミを捨てるマナーの悪い人がそこそこいて法で禁止されたのかも。
- No Bird-Feeding Fine $1,000・・・鳥への餌やり禁止、罰金 SGD 1,000。¥79,146。
都内の公園でも、「鳩(猫)にえさを与えないでください」という張り紙などを見かけることが増えてきました。 天敵がいる訳でもないのでどんどん鳩が増えていて、糞害が結構ひどいようです。 シンガポールのこれも多分同じ理由なんでしょうね。
- No Water Wasting Fine $500・・・水の無駄遣い禁止、罰金 SGD 500。¥39,573。
これで取り締まることってあるのかなあ。。。 シンガポールは小さな都市国家のため水を自給できないので、隣国のマレーシアから輸入しています。 貯水池をいくつも設けたり、確か海水の浄水も日本の技術か何かを利用して取り組んでいた気がしますが、それでも足りていません。 生きるために必要かつ重要な、非常に基本的なインフラを他国に依存しています。
マレーシアとは歴史的な経緯から友好的な関係とは言い難いようで、たまに「水止めんぞこら」と脅されてるようで。 そういった事情ゆえの法なのかもしれません。違うかもしれません。
- No Spitting Fine $1,000・・・唾吐き禁止、、罰金 SGD 1,000。¥79,146。
唾というか、痰かな? これはおそらく、観光立国を目指したためかなと思います。 日本も東京オリンピック(1964年)開催時、マナーアップが声高に叫ばれていて、ゴミのポイ捨てや痰を吐く行為を止めようという啓発活動があったようです。 最近では北京オリンピックでも同様の活動が行われていました。
こうして見てみると、お国柄も感じて面白いです。 どれも結局、特に観光立国を意識しての法整備が多いのかなという気がしています。 日本のように統一国家として歴史の長い国であれば、政府や関係団体からの呼びかけという形でも効果があるのかもしれませんが、歴史が浅い多民族国家だと、さっさと法制化した方が手っ取り早かったのかもしれません。
異なる価値観や常識を持つ人たちが共存するためには、守るべきルールが明文化された方が良いことも多いのですが、異民族や異文化との接触の機会が少なかった日本人にはあまりない考え方かもしれませんね。
ところで、fine のもうひとつの意味
ところで今日、こういう記事を読みました。
fine は状況と言い方によって、「素晴らしい」という最高の意味と、「大丈夫」という渋々 OK(妥協)の意味がある。 普通のテンションで言うと、渋々OKに聞こえがちなので注意しよう。
会社で外国人にFineと言われてイラッとした話 - モウソウの森
え?そうなの?
驚いて Weblio を確認すると、確かにそういう意味があるみたいです。
限定用法の形容詞 [しばしば皮肉に反語的に用いて] ごりっぱな,けっこうな.
That's a fine excuse to make. そいつはけっこうな言い訳だね 《それで弁解とは恐れ入る》.
A fine friend you are! 君はごりっぱな友人だよ.
なるほどー!
英語話者でも出身国でこのあたりのニュアンスを含むかどうかは違いがありそうな気がしますが、この意味を知ると「Singapore is a fine city」という表現もさらにシニカルになってきます。
- シンガポールはすばらしい都市です
- シンガポールは罰金ばかりの都市です
- シンガポールはご立派な都市だよね!
3番目のニュアンスが含まれていることを今回はじめて知った訳でした。
英語を勉強する上では必ずしも知らなくていい(効率考えるなら辞書の1〜2個目の意味をひたすら覚えていった方がいい)知識だと思いますが、こういう生きた英語のちょっとしたまめ知識を聞くと、英語の勉強が楽しくなっていいですね。